「玄米には毒がある」という話を聞いたことはありますか?
酵素玄米には「アブシジン酸」と「フィチン酸」という成分が含まれ、人体に悪影響を及ぼすと言われますが、決して毒ではありません。
そして今回ご紹介するように、有毒だとされる2つの成分を無害化させる方法を知れば、より効果的に玄米を食べることができます。
酵素玄米のアブシジン酸は毒というのは誤解?
酵素玄米の「アブシジン酸」と「フィチン酸」は「毒物」ではありません。
2つの成分がなぜ毒であると言われるようになったのか、成分の詳細も交えて解説します。
酵素玄米の「アブシジン酸」とは?
「アブシジン酸」は穀類に含まれる植物ホルモンの一種で、さまざまな環境下で植物が生き抜くために必要な物質です。
玄米においては、発芽時期の調整や乾燥への適応などの役割を果たし、植物の水分量が少なくなると根で作り出されます。
働きのすべてが解明されているわけではありませんが、植物の成長に欠かせないホルモンです。
酵素玄米に含まれるアブシジン酸の体への影響
酵素玄米に含まれるアブシジン酸は、ミトコンドリアを傷つけるという意見もありますが、人体には悪影響がないという意見もあります。
ミトコンドリアを損傷するという意見は、アブシジン酸が活性酸素の発生を促進させるためですが、エビデンスはなく、人体に悪影響はないうえに、炎症抑制や生活習慣予防に効果的だという可能性も示されています。
アブシジン酸は植物を守るために活性酸素の発生を促すものの、人体への影響はまだわかっておらず、毒物であるとは言えません。
酵素玄米の「フィチン酸」とは?
「フィチン酸」とは、穀類や豆類に1~3%程度含まれている有機リン酸化合物です。
植物の種や茎、花粉などあらゆる部分に含まれており、植物に含まれるリン酸のほとんどがフィチン酸だとされています。
酵素玄米に含まれるフィチン酸の体への影響
フィチン酸は酵素玄米にも多く含まれていますが、人体の排毒作用を促進するとともに、ミネラルなどの吸収を阻害するとされます。
フィチン酸は水に溶けにくい性質を持つことから、結合した毒物やミネラルを、体外に排出する作用を持つ物質です。
しかし、厚生労働省の「既存添加物の安全性の見直しに関する調査研究(平成18年度調査)」に記載されたラットを用いた実験によると、フィチン酸に毒性は認められなかったと報告されています。
そのため毒物ではなく、毒物を体内から除去する働きを持ちますが、栄養素であるミネラルも同時に排出してしまうため、「体に良くない物質」とみなされたのでしょう。
また、酵素玄米に含まれているのは「フィチン酸」ではなく「フィチン」だという説もあります。
フィチンはミネラルを排出するどころか、逆にミネラル吸収効率が上がることも証明されている成分です。
アブシジン酸とフィチン酸を無毒化する方法
アブシジン酸とフィチン酸のデメリットを無害化するための方法を2つご紹介します。
浸水させて不活性化
アブシジン酸とフィチン酸の働きは、玄米を浸水させることで抑えられます。
玄米を浸水させると聞く、胚芽から芽がしっかり出ている状態と思うかがよくいますが、胚芽がぷっくりした状態で炊飯しましょう。
浸水させることで2つの物質の働きを軽減させられますが、完全に失わせるためには、次の項目でご紹介するように発芽させる必要があります。
発芽させて無毒化
玄米は発芽させることで無毒化できます。
発芽すると、アブシジン酸は害のない「ファゼイン酸」に変化すると言われているため、発芽させた酵素玄米であれば安心して食せるでしょう。
玄米を長時間に渡り浸水させることで発芽させれば、より安全性の高い玄米になります。
雑穀と玄米に含まれる栄養成分とその効果
玄米に含まれる栄養素を、代表的な雑穀と比較してみましょう。
玄米 | あわ | きび | 押麦 | |
エネルギー(kcal) | 353 | 367 | 363 | 340 |
糖質(g) | 78.4 | 69.6 | 71.5 | 71.2 |
食物繊維(g) | 3.0 | 3.3 | 1.6 | 9.6 |
脂質(g) | 2.7 | 4.4 | 3.3 | 1.3 |
たんぱく質(g) | 6.8 | 11.2 | 11.3 | 6.2 |
カリウム(mg) | 230 | 300 | 200 | 170 |
マグネシウム(mg) | 110 | 110 | 84 | 25 |
ビタミンB1(mg) | 0.41 | 0.56 | 0.34 | 0.06 |
ナイアシン(mg) | 6.3 | 2.9 | 3.7 | 1.6 |
葉酸(μg) | 27 | 29 | 13 | 9 |
出典:文部科学省:(PDF)第2章 日本食品標準成分表 1 穀類
玄米は他の雑穀と比較して、マグネシウム・ビタミンB1・ナイアシン・葉酸が豊富です。
マグネシウムには便秘改善・大腸がん抑制作用が、ビタミンB1には糖質をスムーズにエネルギーに変換する作用があり、ナイアシンには皮膚と精神を健康に保つ作用があります。
葉酸はDNAを作り出すために必要な栄養素で、妊娠に必要なだけでなく、動脈硬化や心疾患の予防にも役立つなど、人体にとって欠かせない栄養素が豊富に含まれているのが酵素玄米です。
酵素玄米の栄養を上手に摂って美味しく食べる
酵素玄米を食べるときに心がけたいことは、含有されている栄養素を上手に摂取しながら、美味しく食べるということです。
3~4日間しっかりと熟成させる
酵素玄米は3~4日間、しっかりと熟成させることで美味しいごはんになります。
熟成させるほどモチモチ感が増し、玄米特有の歯ざわりの悪さがなくなるため、玄米が苦手な方でも抵抗なく食べられるようになるでしょう。
保温熟成はしっかりと行うようにしてください。
正しい炊飯方法を守ること
アブシジン酸やフィチン酸の働きを抑えるために、正しい炊飯方法を守って食べることも大切です。
酵素玄米を炊飯する前に、長時間の浸水を行い、発芽をさせましょう。
すでに発芽している酵素玄米なら問題ありませんが、通常の玄米であれば、炊飯方法に気を配ることで玄米の栄養を余すことなく摂取できるようになります。
酵素玄米はアブシジン酸・フィチン酸の働きを知ってから
酵素玄米を生活の中に取り入れていくためには、アブシジン酸とフィチン酸の働きについて知っておくことが大切です。
せっかく酵素玄米を食べていても、ミネラルの排出が促進されたり、アブシジン酸の害について知識を持っていなかったりすれば、栄養素を効率よく摂取できなくなる可能性があります。
どちらの物質も「毒物」ではありませんが、より上手な玄米の摂取方法として、無害化する炊飯方法を知っておくことは大切です。